簡易がん診断のためのメチル化DNA検出法の開発

本研究室では、「第5の塩基」と呼ばれるメチルシトシンに着目し、がんを簡便に診断できる技術の開発に取り組んでおります。メチルシトシンは最もよく解析されているエピジェネティック修飾であり、遺伝子の発現を制御する遺伝子スイッチとして機能していることが知られております。がん細胞などの異常な細胞ではこの遺伝子スイッチ状態が異常になるため、これを検査すれば簡単ながん診断が可能です。これまでに、メチル化されるとDNAの物理化学的性質が変化することに着目した遺伝子特異的メチル化レベル簡易測定法(Anal. Chem. (2016) 88, 7101)や、メチル化DNAに結合するヒトタンパク質とホタル発光タンパク質を融合させた人工タンパク質を利用したゲノムDNA全体のメチル化レベル簡易測定法を開発しております(Anal. Chem. (2016) 88, 9264; Anal. Chim. Acta (2017) 990, 168; Anal. Lett. (2019) 52, 754; Anal. Lett. (2019) 52, 1258; Anal. Bioanal. Chem. (2019) 411, 4765)。また、メチルシトシンの脱メチル化反応に関与しているTen-eleven translocation (TET) タンパク質を利用したゲノムDNA全体のメチル化レベル簡易測定法も開発しております(Anal. Bioanal. Chem. (2020) 412, 5299)。

DNA四重鎖構造の機能解析

DNAは通常二重らせん構造を形成しますが、特定の配列を持つDNAはグアニン四重鎖(G-quadruplex: G4)構造と呼ばれる特殊な高次構造を形成します。本研究室では、ヒトゲノムDNA中でG4構造が形成される領域の解析やG4構造形成が生命現象に与える影響を解析しております(BMC Molecular Biology (2017) 18, 17; Biosci. Biotechnol. Biochem. (2019) 83, 1697)。これまでに次世代シークエンサーを利用してヒトゲノム中には9,651箇所のG4構造クラスターが存在することを明らかにしました(Scientific Reports (2018) 8, 3116)。また、エピジェネティック修飾がG4構造形成に与える影響も解析しております。がん細胞などで過剰に発現している VEGF遺伝子やc-KIT遺伝子中に含まれるG4構造中のシトシンをメチル化すると、その熱安定性が変化することを明らかにしました(BBA General Subjects (2018) 1862, 1933; BBA Advances (2021) 1, 100007)。さらに、c-KIT遺伝子やヒト染色体の末端領域であるテロメアで形成されるG4構造中のアデニンをメチル化すると、その熱安定性が変化することを明らかにしました(Biochem. Biophys. Res. Commun. (2020) 524, 472; Epigenomes (2021) 5, 5)。